検証甲子園


2010年07月30日 明石球場  

報徳学園vs市川

2010年夏の大会 第92回兵庫大会 決勝



優勝を決めた報徳学園

甲子園への行き方

 甲子園に行けるチームと行けないチームの違い。
もし、それを知りたければ、この試合を見ればいい。
そう思えた試合だ。

 夏初出場を目論む市川と2年ぶり13回目の出場を狙う伝統校・報徳学園の試合は、いわば、「甲子園への道」を説く教科書になった試合と言っていい。試合開始早々から、両者にみえたほんの少しの差が、試合を大きく分けた。

 その場面は1回表裏の攻防から始まった。
1回表、市川は先頭の新見が内野安打で出塁、幸先よいスタートである。しかし、2番の山木は、報徳学園のバントシフトに合わせるかのように、サード前へバントを転がし併殺打。3番・西井が左翼前安打を放っただけに、悔やまれるバントミスである。
変わって、1回裏、報徳学園は先頭の八代が右翼前安打で出塁すると、2番・谷は初球で送りバントを決めた。3番・中島が左翼前安打で続いて好機を拡大すると、4番・越井が中前安打を放ち、1点を先制した。

両者、先頭打者を出しながら、市川は走者を送れなかったのに対し、報徳学園はきっちり送った。しかも、初球である。
「(選手たちが)硬かった。目の前に三塁手がいてるのが見えてて、そこにバントをしてしまう。見逃してもいいのに、その余裕がなかった。こっちがいうてやらんかったんが、だめでしたね」。
市川の徳永伸寿監督である。

 試合はまだ始まったばかり。この1回だけと考えれば取り返せると思われがちだが、高校野球はそんな甘くない。高校生はメンタルをそう上手くはコントロールできない。「得点をしのいだチームと取り損ねたチームと、この差は大きいですよね」と徳永監督は1回表裏の攻防を嘆いた。

3回表、市川は無死から8番・萬の右翼越二塁打で好機をつかみ、9番・新里が犠打を成功させる。しかし、一本が出ない。4回表には、先頭の3番・西井が左翼前安打で出塁するも、4番・亀谷が送れずに、結局、三振ゲッツーでチャンスを潰してしまう。ちぐはぐな攻撃を繰り返していては、1回に失った流れは変わっていかない。

一方の報徳学園は4回裏、先頭の4番・越井が左中間二塁打で出塁、5番・浦崎が送りバント失敗の末に三振、6番・森田は遊撃ゴロで、走者を進められなかった。普通なら、これで流れを失うのだが、7番・木下が二遊間へ痛烈なゴロを放つと、市川の二塁手・新里は追いついたものの、これをはじいてしまう。二走・越井は一気に本塁を駆け抜けた。

報徳学園からしてみれば、ここで無得点に終われば痛いところだった。無死二塁の好機が潰えかけていたのだ。それを執念で7番打者が安打にする。数字以上に大きい2-0である。

そして、ここからは両者の力の差が大きく分かれてしまう。
6回裏、報徳学園は簡単に二死を取られるも、6番・森田が左翼フェンス直撃の三塁打を放つと、またも、7番・木下が中前へはじき返し1点を追加。7回表、市川は1死から4番・亀谷が右翼前安打で出塁するも、5番・小寺の打席で飛び出してしまい、報徳学園の捕手・森田に刺されてしまう。小寺が出塁し、6番・河原も続いたが、7番・佐野の場面でまたも走者が飛び出し、森田の餌食になった。7回裏、報徳学園は2本の安打でまた1点を追加した。

4-0。

市川にもチャンスはあったから、力の差があったようには思えない。しかし、終わってみれば、報徳学園の完勝である。

「この大会を通じて、粘り強くなりました」とは、報徳学園・永田裕治監督である。伝統の力と言うべきか。初回に絶妙なバントを初球で決めた谷も、2打点で活躍した7番の木下も、一般で入部してきた選手だという。たたき上げで、成長を遂げた選手が試合の流れを呼んで、活躍を見せる。これが甲子園常連校・報徳学園なのだ。「着飾った野球をしたくはない。甲子園でも報徳の野球がもう一回できるのが嬉しい」と永田監督は誇らしげに語る。

まさに、甲子園に行っている伝統校とそうでないチームとの戦い方の差。
この試合が、「甲子園への行き方」を伝えていた。

(文=氏原 英明
(写真img02~img09=田村正浩)


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